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やるせない26歳が綴るこれは独り言

ここからラブコメが始まる/『やはり俺の青春ラブコメは間違っている14』【感想】

『やはり俺の青春ラブコメは間違っている14』(渡航

 終わる……

右手に重くのしかかる読み終わったページ、左手の指先で摘まむ最後の1ページ。最後のページに書かれている文字が薄っすら透け、思わず捲るのをためらった。裏側からもしっかり確認できてしまった『了』の文字。読了、完了、終了。終わりを意を示す記号が確かに向こう側で待っている。小さく息を吐き出して、左手から右手へと最後のページを受け渡す。そこには7行で締められる結末。その一行一行を噛みしめながら読み、最後の行に視線を沿わせる。読了と共に溢れてきた音にならない声は『了』の一文字に降り注いだ。

物語は、終わった。

物語の終わりって切ないよね

2019年12月19日に大人気ライトノベルシリーズ『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』通称『俺ガイル』の最終巻が公開されました。

延期&延期を繰り返し、完成したのはライト(light)を払拭する500ページ以上の大ボリューム文庫本。表紙に書かれたヒロイン雪ノ下雪乃は今まで見せることがなかった柔らかい微笑みを振りまいている。もうこれネタバレみたいなもんじゃないっすか……

ラノベに限らず物語ならなんでも好む雑食だが、作品にハマることは少ない。「この作品面白い!」と思って全巻集めても、その熱は一過性であることがほとんどだ。そのため大半は買取価格が下がらないうちに本棚から新しい持ち主の元へと飛び立っていく。そんな私が大学生になって久しぶりにハマったライトノベルが「俺ガイル」だった。作品との出会いのきっかけは至極モットー当たり前、私のブログでもたびたび紹介している一色いろは(cv佐倉綾音である。いろはす可愛い。

reyu.hatenablog.com

と、あざと可愛いキャラクターに釣られて原作を手に取った次第だが、読んでみるとこれまた面白い。というか一巻を読んだ時点ではそこまでストーリーに魅かれなかったけど、ライトノベルにはあまり見られない巧みな言葉遣いに魅かれた。語彙力的な問題は言葉を覚えればいいだけなのだが、そのリズムや使い方はセンスが求められる。文法の正解に則っただけでは正しい文章にはなるが、面白い物語にはならない。天邪鬼すらドン引きするレベルの捻くれ男子高校生を主人公にしたこの作品は作者の豊富で鮮やかな語彙力とセンスによって「あー俺、八幡(主人公)に似てるわー」と共感を呼びライトノベル界を代表するベストセラー小説となった。なんと900万部突破とかなんとか。えっと1部当たり100円と計算したら……わーお。

選ばれたのは…

そんな大人気作品が最終巻を迎えたのだ。物語が終わること自体はとてもとてもめでたい!なぜなら完結せずになぁなぁと続編を先延ばしにしているものもあるからね。〇宮ハルヒとか。特にラブコメラノベは最後に「選択」をしなくてはいけないのがお約束。主人公の捻くれ具合から「誰も選ばない」は考えられた結末の一つだったが、13巻で色々と覚悟を決めたようでエンディングは約束された1人に真っすぐ伸びるウィニングロードのようなものだった。うーん、分かってはいたけど、由比ヶ浜結衣(通称ガハマ)じゃないのかぁ……いい子なんだけどなぁ。どんなにいいやつでも選ばれないのが恋愛なんだよなぁ……切ねぇ。けど、実はBD特典の小説でガハマルートは既に書かれているようで。お願いします文庫化して販売してください!

最後は八幡と雪乃が赤面しながらも思いっきりイチャイチャしてて微笑ましい気持ちになります。ところで直接「好き」という言葉がでたのはこの最終14巻が初めてなんじゃないだろうか。そもそも「好き」という直接的な感情以前に「恋」や「愛」といったラブコメに必要不可欠な言葉すら最後の最後まで避けてきた気がする。物語のテーマの一つとして男女の友情があったのかもと俺は考えている。

ずっと禁忌とされていた優しく甘い言葉が最後の最後に解放された。間違い続けながら正解に近づいていく、さらに青く成長した彼らたちの「ラブコメ」がここからやっと始まるのだ。

語彙力とセンス

 

俺ガイルを読んで毎巻「悔しいな」と思っていた。やはりそれは書かれた言葉の巧みさに向けて呟いたものである。知らない熟語、かっこいい慣用表現を沢山使っていることに悔しさは覚えない。語彙力なんか暗記すればすぐ上がるし、今の時代調べれば同義語なんて山のように出てくる。しかし、その使い方にはやっぱり生まれ持ったセンスが問われるのだ。ただの文字、いや言ってしまえば黒一色で描かれたただの線を目にして、笑ったり、泣いたり、ニヤニヤしたり、苦しくなったり。心を動かす文学作品を目の前にすると言葉に向けられた才能を羨ましく思う反面、圧倒的に離れた表現力の差を感じてその悔しさで舌打ちが漏れる。特に俺ガイルはキャラクターの動きがほんとに細かい。セリフカッコを2つ以上続けることが少なく、問答シーンでは力強いセリフの間に直接的な心情描写を使うことは避け、些細な表情の変化や指先の動き通して意を伝えてくる。そのためキャラクターが生き生きしているのだ。俺もこんくらい書けるようになりたいなぁ、うーん悔しい( ;∀;)

渡航さん、次回作も楽しみにしています!

ということで私の評価は…

★★★★☆

星4つです!-1はガハマルートじゃなかったことへの不平だよ!しかし終わり方に不満は全くなく、大満足の最終巻でした。重箱の隅を楊枝でほじくるようなことはライトノベルでは無粋。

高2に上がり先輩になったタメ口いろはすと新入生の小町の絡みをもっと見たい~!あのカップリングは久しぶりにキモオタの血が久しぶりに騒いだ。あぁ尊い。どうか番外編でよろしくお願いします。

 

そして私は!

今週土曜日に小学館カルチャーライブで行われる「俺ガイル語り」に参加してきます。

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渡 航(ライトノベル作家)、天津 向(お笑い芸人)の講座「シリーズ完結記念! 最終巻が100倍おもしろくなる「俺ガイル」語り」|小学館カルチャーライブ!

作者の渡航さんからどんな秘話を聞くことができるのか、今からとても楽しみですね!(開催日前に読み終われてよかった…)翌日TOEICを控えているけど、大丈夫!

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