淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

【ブックレビュー】12月、1月に読んだ本まとめ【7冊】

年末年始の読書

気が付けば年末どころか1月が終わっていて、ああ時の流れは……といつも通りの語り口で始まりそうになったから、なにか季節感あふれる枕詞で書き始めようとしたけど、2月という冬っちゃ冬だけどそこまで冬でもないし季語もよくわからない月を迎えてしまって、果たしてなんと表現したらいいのか分からないこの状態をそのまま書き連ねることで前書きとしようと思う。

 

 

黄色い目の魚 / 佐藤多佳子

海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて――。16歳というもどかしく切ない季節を、波音が浚ってゆく。青春小説の傑作。

あらすじより

青春恋愛小説を読むのはとても久しく感じた。甘酸っぱいなんて表現される10代の青春だけど、実際甘さを堪能できるのは極少数で、大多数のルーザーは辛酸を舐ることになる。ある程度月日が流れ、今では思い出として語られるあの日の記憶だがそれがやはり甘さが含まれることはなく、ただただ酸っぱいだけだ。

ただ、成長というか変化した価値観の上から見下ろす昔の自分はとても幼く見えて恥ずかしい気持ちになる。そしてまさに「昔の自分は甘いな」という感想に至るのだが、それを甘酸っぱい青春とラベルを貼れるほど旨味はない。

舌を口蓋に擦り付けたくなる苦味のような記憶は年の経過と共に薄れていく。10代の等身大としてあの辛酸を味わうことは2度とないと思うと、清々しいような、だけど寂しいような。そんな気持ちになった小説だった。

reyu.hatenablog.com

 

ふたり / 赤川次郎

お姉ちゃんは高校二年までしか生きなかった。でも、私が来年高校一年になり、二年になり、三年になったら、私はお姉ちゃんの歳を追い越してしまう。それでもお姉ちゃんは、ずっと私の中にいてくれる? 死んだはずの姉の声が、突然、頭の中に聞こえてきた時から、千津子と実加の奇妙な共同生活が始まった……。妹と17歳で時の止まった姉。二人の姉妹のほろ苦い青春ファンタジー

あらすじより

 青春の舞台は学校とは限らない。色々なことに”気づく”ことになる10代後半が過ごす場所は同級生で溢れている教室や薄暗くなった放課後の街だけではない。家庭だって青春シーンの一つだ。

才色兼備の姉に強い劣等感を抱き、距離をとって過ごしてきた実加。姉が交通事故で亡くなったその日から”誰よりも近いところで”姉と共に過ごすことになる。変化した距離、変化する環境からずっとそこにあった、だけど知らなかったことがゆっくり姿を現していく。知らないことは罪ではないが、知らなかったと気づけば罪悪感を抱くものだ。

青春ファンタジーと紹介するには少し重い内容だが、読みやすい。

ニーチェの言葉

ニヒリズムや反宗教的思想といった独自の思想により二十世紀の哲学思想に多大なる影響を与えた、十九世紀ドイツの哲学者ニーチェ
「神は死んだ」という主張やナチズムとの関わりを噂されるなど、様々な伝説に彩られた孤高の哲人だが、
実は彼は、ほとばしる生気、不屈の魂、高みを目指す意志に基づいた、明るく力強い言葉を多数残しています。
本書では、それらの中から現代人のためになるものを選別しました。
心ゆくまで、あなたの知らなかったニーチェの世界をご堪能ください。

 どこかで聞いたことあるけどなにやった人なのか知らない人ランキング3位(当社調べ)。

人生論を「あーなるほどね」程度に嗜むなら、そこらのJ-POPもいいが哲学者の本がおすすめしたい。回答が載っているわけではないのだけれど、これこそ”気づき”を与えてくれたりする。ただ、哲学関係の書物をを読み漁ると色々支障をきたすことがある。自分が頭よくなった程度の勘違いに陥るならまだ可愛いのだけれど、周りの人(や世界)を無知だと見下し始める過激派になってしまう人もいるので用量用法は正しくお使いください。

見かけにだまされてはいけない

道徳的なふるまいをする人が、本当に道徳的であるとは限らない。

というのも、道徳に服従しているだけかもしれないからだ。自分では何も考えず、世間体のためだけに単に従っているのかもしれない。

あるいは思い上がりからそうしているのかもしれない。無力で諦めている可能性もあるし、面倒だからあえて道徳的なふるまいをしているのかもしれない。

つまり道徳的な行為そのものが道徳的だと決めつけることはできないのだ。要するに道徳は、その行為だけでは本物かどうかはなかなか判断できない。

p.79

 

奈落 / 古市憲寿

17年前の夏、人気絶頂の歌手・香織はステージから落ち、すべてを失った。残ったのはどこも動かない身体と鮮明な意識、そして大嫌いな家族だけ−−。彼女を生かすのは、やり場のない怒りか、光のような記憶か、生まれ出る音楽か。
孤独の底から見上げる景色を描き切った飛翔作。

あらすじより

 過去二作品芥川賞にもノミネートされ、作家として禍々しい頭角も現している社会学古市憲寿の3作目の文学作品。

テーマはたぶん”生き地獄”。

不幸な事故により肉体の動きが制限され一切の意志疎通ができなくなった香織。鮮明に見える景色の向こう側、自分がいない世界で自分が勝手に定義されていく。彼女は代弁者のように自分の理想を述べる他人達によって”生かされていく”。

地獄は死後迎える世界とは限らない。

生かされている者は生きている者によって裁かれる。

 人のセックスを笑うな

19歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた――「思わず嫉妬したくなる程の才能」と選考委員に絶賛された、せつなさ100%の恋愛小説。第四一回文藝賞受賞作。短篇「虫歯と優しさ」を併録。

あらすじより

 大人の関係って言えばすべてがロマンチックになると思うなよ。不道徳な関係を持っても「大人」という免罪符を使って、「俺らはもう若くないんだぜ……」的な感傷に浸るやつがいる。私です。

 

黒川さんに悪役は似合わない / ハマ カズシ

学園には今、生徒会長候補二人による支持率争いが勃発していた。候補者の一人たる黒川さんに目をつけられた俺、倫太郎は、なぜか黒川さんの手助けをすることに。え?俺が悪役になって校則を破り黒川さんがそれを罰する?自由が行き過ぎるとどうなるかを分からせよう?はぁ?規律を守るためにマッチポンプするって、それ本末転倒なんじゃ。明らかに悪いことしてるでしょ!でも、黒川さんには何か大切な思いがあるみたいだった…。マッチポンプから始まる学園ラブコメ堂々開幕!黒川さんのため、最高の悪役に俺はなる!

あらすじより

表紙買い。おっweeeタイプミスではない)が描く女の子は線がシャープだから好き。肝心の内容は………うん。

 

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識 / 西尾維新

人を愛することは容易いが、人を愛し続けることは難しい。人を殺すことは容易くとも、人を殺し続けることが難しいように。生来の性質としか言えないだろう、どのような状況であれ真実から目を逸らすことができず、ついに欺瞞なる概念を知ることなくこの歳まで生きてきてしまった誠実な正直者、つまりこのぼくは、5月、零崎人識という名前の殺人鬼と遭遇することになった。それは唐突な出会いであり、また必然的な出会いでもあった。そいつは刃物のような意志であり、刃物のような力学であり、そして刃物のような戯言だった。その一方で、ぼくは大学のクラスメイトとちょっとした交流をすることになるのだが、まあそれについてはなんというのだろう、どこから話していいものかわからない。ほら、やっぱり、人として嘘をつくわけにはいかないし――戯言シリーズ第2弾

あらすじより

あらすじから溢れ出る西尾維新節。

ストーリー自体は言ってしまえば超単調なんだけど、埋め尽くされた言葉たちが凄くアグレッシブ。ワードセンスの塊。語感でここまでスタイルを確立してるのは凄いなとほんとに思う。ほんと。

主人公の語り口もただ無為なことダラダラ語っているだけなんだけど、言葉の遊び方やリズムの取り方次第でこんなにも見せ方、否、魅せ方が変わるんだなと感心しました。

 

終わりに。社会人って時間ないね

本を読む時間ががくんと減りました。

時間があっても体力が……うーん、まだまだ若いはずなのだけど、気疲れでしょうか。

本を読みたいって気持ちは増えてきた気がします。現実逃避欲からでしょうか。