【1K】初めての物件探しは不安でいっぱい【ロフト付き編】
今月から一人暮らしが始まりました。
「そうだ、一人暮らしをしよう」
記帳された0の数は5つ。頭の文字は6。特段貯金を頑張ってきたつもりはないかったが、順調にその数字は増え続けていた。実家暮らしはお金が貯まるという話はどうやら本当らしい。ならこのまま親元に居座り続けて0が6個になった暁には100万円貯金アピールを誰に向けるでもなく拡散するのも楽しそうだ。いや幸福と達成の報告は敵を作りやすいからやめておこう。
100万円をこの青色の通帳に載せるのも確かに大きな夢の一つだが、その前に達成すべき目標があった。その目標に挑戦するのはまさに、きっと、たぶん、今だ。
社会人になって定めた自分ルールその3。
「お金が貯まったなぁ」とふと思えたときに、一人暮らしを始めよう
都内新築6万以下、ロフト付きでお願いします。
「その条件ですと、こちらとかこちらになりますね」
並べられたA4の紙には見慣れない間取り図が書かれている。なるほどこの条件は些か欲張りすぎと思っていたが、そうでもないらしい。紹介してもらったやつだけでもこれだけ選択肢はあるんだからもう少しわがままを言ってもいいかもしれない。しかしこの間取り図から部屋の形はなんとなくわかるけど、この5畳?とか面積11㎡?がいまいち想像できない。もちろん広くはないだろうけど……
「これって内見できますか?」
「お時間が大丈夫でしたらご紹介しますよ!」
せっせと店舗裏の駐車場に移動してそのまま車で約10分。大通りを左折して住宅地に入ったすぐのところに目当ての物件はあった。写真で外観は確認済みだったが、実物に圧倒される。このオシャレ感、機能性を無視した無駄なデザイン(失礼)、俺は、ここに、住むのか……(まだ決まってない)。まさに令和って感じの建物だ。なんだそれ。
「こちらが今日ご紹介します106号室です」
うわあ、玄関扉になんか英語が書かれてるけど文字が薄くて読めない〜、それがミステリアスでめちゃおしゃれ〜。てかすでに新築の香りが漏れ出てるよぉ〜。まだ呼吸を止めてない木材が吐き出す酸素の香り〜。印鑑を取りに帰りそうなテンションだけど我慢して、それではお邪魔します〜えっ……///
せまッッッッ!!!
なにこれ狭ッッ!!この部屋ザ・ノンフィクションで見たことあるよ!それか密着警察24時!確かに部屋は綺麗だし、壁紙なんか見てもおしゃれだけど、これじゃシルバニアファミリーのお家と変わらないよ。あかりの灯る”大きな”お家とか言ってたくせに二階部分はウサギさん一匹しか入れない小さなワンルームだったあの悪質詐称事件を思い出した。
「……意外と、狭いですね」
「そうなんですよー。ただ今はこの形の部屋が人気で……」
1階部分が5.5畳、ロフトが3畳。合わせて8.5畳の生活空間。天井がかなり高いので見上げるとそれほど圧迫感はないが、視線を身長の高さに落とすと壁が近くてとても窮屈にかんじる。これが私が求めていた都内新築6万以下、ロフト付きか。狭さというか小ささに少し驚いてしまったが、希望通りすぎる物件だ。
(ここで俺は社会人として日々を耐え抜いていくことができるだろうか)
目を閉じて未来の自分に問いかける。
『ドクン、ドクン』返事をするようにその鼓動はだんだんと大きくなる。『ドクン、ドクン』これは住めって意味なのか?『ドク、ドクン…です』鼓動が止まらない、足下からじわりと伝わってくる。『ドン…は…でありま…ドン』心音はゆっくりと言葉となって俺の耳にとど……は?は?はい?いやいやいや自分の心臓じゃないぞこれ。たかが内見で心拍数あげてどうするんだよ。じゃあ、この音は一体…
うるさッッッッ!!!
「あーこれは隣のテレビの音ですね」
うるさっ!え、これはいくらなんでもうるさくない?
「木造なのである程度は仕方ないですね」
その言葉を聞いて、ふとレオパ○ス21のコピペが頭をよぎった。
・チャイムならされたと思って玄関を開けたら、四軒隣の部屋だった
・チャイムが聞こえ今度こそはと思ったけど、やっぱり隣の部屋だった
・チャイムを鳴らしたら住人全員が出てきた
都市伝説はどうやら実在するようだ。これは壁ではない、ただの仕切りだ。コンビニ弁当に入っているあの草っぽいやつと同類だ。仕切りにプライバシーなどない。ロフト付きで天井が高くなってる分、室内の音が反響しやすくなっているのだろう。その反響した音が壁全体を通じてこちらまでバンバン伝わってきてるといったところか。壁全体から生活音が流れてくるなら解決方法はただ一つ。こちらも大音量をぶつけて音を相殺するしかない。
「…これはちょっとうるさくないですか?」
「人気エリアですよ、いい物件なので明日には……あーでも少しうるさめですね」
不動産屋まで引きはじめる始末。
てかロフトいらなくね?
今回はこれでお開きに。あらためて条件を”都内新築6万以下、ロフトはいらない”と伝えてよさそうな物件があったらメールで紹介してくれるようにお願いした。
あぶないあぶない。もし隣の人が留守だったらあやうく契約してるところだった。狭さに関しては慣れがあるし独り身の新社会人だから贅沢は言えない言わない。だけど、音は、特にインドアで家に篭ること多いから特に騒音だけは…ッ!我慢できないよね、けどこれは運要素強め。だけど手放してから「あそこやっぱいいとこだったな」とか元カノを現在に重ねる恋愛みたいな物件探しはしたくない。はたして運命の物件に出会えるのか、そしてその運命に気づき選択することができるのだろうか。
そう私の物件探しはまだ始まったばっかりだ!
つづく。