淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

【竜とそばかすの姫】名作×ヒット作の限界【感想】

エヴァ以来久しぶりに映画を映画館で観てきた。

4連休前日に有給を使って五連休初日を迎えた私が歩く平日の街は、夏休みに入ったのだろう大学生をはじめとした多くの若い人たち(大学生も若いと表現してしまうほど私も歳を取ってしまった)でごった返していた。

街が混んでれば映画館ももちろん混んでいる。お昼すぎ15時35分からの回はすでに半分以上が埋まっていて、「おいおい新海誠ブームが細田守に飛び火したのか」と思ったがどうやらコロナ対策で座席間隔が制限されていたようだ。隣に人が座らないのでソロ鑑賞者にはありがたい。その反面初デートで映画をチョイスしてしまった高校生には同情をする。肘と肩の小競り合いでドキドキできないのだから。

 

本日鑑賞した作品は『竜とそばかすの姫』

時をかける少女サマーウォーズを代表作に持つ映画監督細田守の最新作である。


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今回はまどろっこしい導入抜きで結論。

つまらなかった。

ryu-to-sobakasu-no-hime.jp

つまらなかったのである。本当につまらなかった。特段期待して見に行ったわけではないから「時間を返せ!」ほどの昂りもないが、エンドロール後劇場が仄明るくなって

「うん、つまんなかった」

と不出来をスッキリと受け入れられてしまうほどだった。

 

物語の主軸が最後まで見えない

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物語は現実世界(主に高知県仮想世界(U〈ユー〉)で展開されていく。

主人公は10代の女子高生で内外的に様々な悩みや葛藤を抱えた女子高生という一見深そうで潮干狩り会場くらい浅いテンプレ設定。「私なんか足細くないし全然かわいくないもん」と八頭身小顔キャラに言わせるあたりほんとテンプレ。さてこの天ぷらならぬテンプレを”仮想世界”の中でどうやって消化&唱歌させるのだろうと期待しながら見てみればー……なんかよくわからないまま”唱歌”して終わった。

 

物語の展開は

主人公仮想世界で才能開花(仮想世界)

トラブルに巻き込まれる(仮想世界)

惹かれ合う竜とそばかすの姫(仮想世界)

問題解決(現実世界)

これがご都合主義で進んでいく。

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私が特に気になった部分は現実世界の描かれ方だ。物語は基本仮想世界で進んでいく。だからだろうか現実世界の広げ方がかなり杜撰なのだ。

・幼馴染の男の子との関係に悶々としている主人公を描くのに恋愛にスポットは当たらない。

・クラスメイトの存在が特に意味をなさない。

・周りの大人たちの存在も特に意味をなさない。

・主人公は幼いころに母親を事故で亡くしているが、ただの設定止まりで”母親の死”が何かのツールになることはない。

時かけチックなやりとり(河川敷バックに男女が向き合う平面的な場面とか)が散見できて少し微笑ましかったが、もちろんそのやりとりに意味はない。

なんもないのだ。現実世界いらなくね?ってかんじ。だからといって仮想世界の物語がビュンビュン進むと言うわけでもなくて😑

これは時空を超えた男女の青春物語でもないし、家族や地域の繋がりを武器に立ち向かう一夏の大冒険というわけでもなかった。

これは歌姫が児童虐待の現場を突き止める話である。

(一応白文字で隠しました)

 

物語展開もかなり雑だった。

『遅刻しそうなJKがパンを咥えて走っていたら突然角から現れるのは?』レベルのフラグを何度も出してきて辟易したし、

「私たちは仲がいい家族なんですよ!ははは!(子供は物憂げ)」と不自然すぎるカットが伏線臭過ぎて恥ずかしくなっちゃうし、

『掃除当番を何で決めるか決めるためにじゃんけんにするか多数決を取ろう』みたいなまどろっこしい提案で最終課題を解決しようとする主人公たちに(アホかいな…)と失笑しちゃったし、

とにかく色々と雑すぎてツッコミ待ちでは?と思うほどだった。

 

そんで現実と仮想を行き来するせいで直線的に話が進まない。話の中身がないのに見てて疲れた…この物語が進むにつれて疲れる感じ、村上春樹の世界の終わりとハードボイルドワンダーランドを思い出した。あれは最後に並行世界が一つに繋がったけど、こっちは……まぁみんな幸せならOKってことで!()

 

時かけ×サマーウォーズは小数同士の掛け算はになってしまったようだ。

 

だけど音楽と映像は最高でした。

宮野真守宮本充が出てたので満足です。

ではでは。