【考察】「いつかのメリークリスマス」は失恋ソングではない【歌詞】
4時間かけて放送する音楽番組って珍しい
歌のゴールデンヒット~昭和・平成・令和の歴代歌王ベスト100~が10月7日TBSで放送された。
その内容は株式会社オリコンがオリコンチャートとして売り上げ集計を開始した1968年から2019年までの51年間で最もシングルを売り上げた男性アーティストをランキング形式で発表するといったものだ。なるほど、だから歴代歌唱「王」なのか。
ランキングの結果は以下の通り。
1位 B’z
2位 Mr.Children
3位 嵐
4位 サザンオールスターズ
5位 SMAP
6位 GLAY
(なぜ6位まで書いたのかというとGLAYが好きだから)
シングル総売上数3598万枚を叩き出し、圧倒的な数字を持って堂々の1位を飾ったのはやはりB'zだった。これには文句なしの完全納得である。
(このアー写真、超カッコいい)
テレビから流れるB'zの映像を眺めているとなんだかじっくり稲葉の歌声を聴きたくなってきた。私は番組が終わると、ウォークマンを取り出して再生リストをスクロールし始めた。
ふと目に止まったのは「いつかのメリークリスマス」。私が1番好きな曲「ねがい」までリストをスクロールしていくつもりだったが、あ行でその曲を見つけて指が止まった。そのまま再生ボタンに人差し指が触れる。
秋に聞くクリスマスソングもまた乙なもの。来たる冬に期待を持たせる。
曲が紡ぎ出す今、昔、そして今
久しぶりに聞いた「いつかのメリークリスマス」。
なんど聞いてもこの曲はいい……。
なんと素敵な歌声と言葉達なのだろう。
たぶん歌詞をそのまま載せると著作権的にアウト?なので、抜粋して紹介する。
まず冒頭はこうだ。
ゆっくりと12月の明かりが灯りはじめ
慌ただしく踊る街を誰もが好きになる
12月の明かり、慌ただしく踊る街。クリスマスという言葉を使わずに12月の情景を作り上げる。その後、クリスマスを楽しみ過ごす様子が「僕」という一人称視点で歌われていく。そのサビはあまりにも有名である。
いつまでも手をつないでいられるような気がしていた
何もかもがきらめいて がむしゃらに夢を追いかけた
お気づきだろうか。
クリスマスの情景を作り出した冒頭以降言葉は全て過去形で歌われていく。忘れかけていた過去の思い出が切れぬようゆっくりと糸を巻き戻すように。
別れを漂わせる名曲だが、実はそこに後悔などの負の感情は全く感じさせない。
なぜなら今の「僕」が見ている景色は昔どこかにあった「いつかの」景色だからだ。
別れの余韻が残り続けている後悔のクリスマスじゃない。時間と共に薄れていく記憶、振り返ること少なくなってきたあの日。綺麗に飾られた冬の街の中にいつかの景色を見つけてふと思い出す。
そして最後はこうしめる。
立ち止まってる僕のそばを 誰かが足早に
通り過ぎる 荷物をかかえ 幸せそうな顔で
最後の視点は現在に戻ってくる。
実は現在の時間軸で行われた僕の動きは
「クリスマスの街並みを見て、ふと立ち止まってる」。たったそれだけである。
過去に思いを馳せていることなど誰知らず、みな特別な日を過ごすクリスマス。目の前を駆けていった誰かにいつかの自分を重ね合わせる。そしていつかのメリークリスマスよりも少し大人になった彼が自嘲気味に白い息を吐く姿が想像できる。
↓歌詞のフルは下からどぞ!
いつかのメリークリスマス B'z 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
今年のクリスマスは誰かと過ごしたい!
高校生のころは「いい失恋ソングだなぁ泣」とクリスマスに1人佇む可愛そうな男だった。だが、今ならわかる。これは過去への鎮魂歌だ。
過去と現在の使い分け。「いつかの」と表現される特別な日。優しく背中から抱きしめてくれるような松本のアコースティックギター。静かな音の中で稲葉の声が切なく震え、人肌の暖かさで聞く者の心を包む。
いやーB'zには参りました。