淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

助手席から見える風景

深夜の環七を走る一台の車。車内ではクーラーが快適な温度を保ってくれている。

助手席でくつろぐ俺はふと昔を思い出した。それは隣でハンドルを握ってる友人がまだ免許を取り立てだったころ。ドライブに誘われ、助手席に乗り込んだ俺は天井に取り付けられたアシストグリップをぎゅっと握りながら、怖い、危ない、ヤバいと生意気にも文句を垂らしたものだ。同い年が運転する車に乗る経験はあの時が初めてだっただけに、とても不安だったのが本音だ。

今や友人が片手ハンドルでイエローカットをしようが急加速をしようと、私の手が安全運転を乞うように何かを握り込むことはなくなった。それはきっと友人の運転が上手くなったのもあるのだろうけど、なにより運転する姿が似合うようになったからだろう。赤く燈っていた信号が青く顔色を変えて進行を促す。対照的に顔色一つ変えず悠々とアクセルを踏むその姿は「大人」だった。

目的地の若洲に近づいたころには、本格的に雨が降り出していた。車が細かく叩かれる音をバックミュージックにしながら人生について語り合う。気づけばお互い23歳。出会ってから18年の付き合いだ。18年間変わらず温厚な性格のまま大きくなった友人。仕事をなくした俺にもいつも通り接してくれることがとても嬉しかった。距離を縮めて同情することも、社会人の立場から説教することもない。「どうなんだろうな、うまくいけばいいな」その相変わらずはっきりしない優しい言葉に安心をする。

 

地元に着くころには雨の足音は聞こえなくなっていた。

「止まない雨はない」

それは雨上がりの公園くらい臭い言葉だけど、その通りかもなと思った。

 

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