淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

すり減った母音

相棒のノートパソコンが限界を迎えたようだ。こいつと出会ったころはまだ俺が高校生だった。

用途はニコニコ動画の視聴くらいしかないくせに自分専用のパソコンを欲した私は機械全般に詳しい友人を引き連れて、思い出したあれはザーザー雨の日に、池袋のヤマダ電機へと向かったのだった。

「どんなパソコンがいいの?」という友人の問いに私は以下の条件を提示した。

・ノートパソコン

・ブルーレイが見れる

今思うとほんと謎のこだわりだ。ニコニコ動画しか見ないくせに超生意気な条件である。当時の私はもちろん大学生のようにレポートを喫茶店で仕上げるような学習もしてないし、ましてやブルーレイなんて家のテレビで見ればいいのでは。

「いやDVDならまだしもブルーレイ機能はいらなくない?」

と正論で説得する友人を馬耳東風。あの時の私は必要としていたんだ、ブルーレイが再生できるノートパソコンを。

この謎こだわりは意外と好転する。なぜなら”ブルーレイが見られるノートパソコン(安め)”という条件でだいぶ選択肢が絞られるからだ(というかほぼ一つしかなかった)。ほぼノータイムで選ばれたのは富士通のノートパソコンLIFEBOOK。

「雨の日にわざわざ来たのだから割引しろ」

と図々しく値引き交渉をしてくれた友人には今でもほんと感謝している。

そうして念願のブルーレイが再生できるノートパソコンを手にしたのだけど、まぁオチがしっかり用意されていた。

確かにブルーレイ再生機能はついてるんだけど、ノーパソのディスプレイはいたって”普通”だし、なによりCPUが追いついてなくて読み込みまくりのカクカク再生。気持ちいいくらいズコーだった。と言っても結局はニコニコ見てたからあんま不満はなかった。

そんな感じに高校生時代はニコニコ動画視聴専門機として活躍してたこいつが本領を発揮したのは大学生になってからだった。このパソコンを買う時友人はこんなことも言っていた。

「officeがついてるからこれお得だよ!」

「オフィス?いや、知らんけど。いらんけど」

「いや、絶対使うことになるからこれにしたほうがいい」

「は、はあ…」

友人(当時16歳)の言葉の意味を知った大学一年生(19歳)。おかげで買い換えることなく単位取得のレポートから卒業論文まで使い倒すことができた。ほんと友人には頭が上がらない。

 

気づけばブルーレイの時代からサブスクの時代になり、私もニコニコ動画からpornhubに移行してしまった。今の時代に「ブルーレイが見られるノートパソコン」を求める人はいないだろう。ましてノートパソコンを買ってまでニコニコ動画を見たいと思っているやつがいたら病気だ。ニコニコもブルーレイも見なくなった私はこいつを使い続けてきた。

しかし、半年前から突然様子がおかしくなった。

『うーん、うーん』

と小さく唸ったかと思えば

『ブォォオオオオオオオン!』

と叫び出し

『スゥーン』

と落ちる。

「おいおいおいおい!マジかよ!ちょ、ちょっと!」

メールを開くのに2分かかって最後には落ちるし、電源を落とさないでくださいって言って最後には落ちるし、"Hello,world"って言いながら落ちるし。共に泡となった記事も数知れず、3万字が飛んだ時は俺の自律神経が落ちかけた。

整理すれば動作は軽くけど、整理しようとすると落ちる。もうどうしろと…

「買い替え時期か…」

無難にhpかなとぽちぽちしててふと気付く。右手にはiPhone、左手首にはApple Watch、AirPodsPROを付けながら、iPadでtheboysシーズン2を見ている……そかから導き出せる選択は、1つ。

ということでmacbook airを購入した。完全にオーバースペックである。10万越えのスペックである必要は一切ない。なぜなら俺はブログと書類管理しかしないから。ほんとブルーレイ機能付きのノートパソコンを買ったあの頃となにも変わりなくて草。

正直なところ機能とかスペックはよくわからない。だがさすが世界のアップル、見た目はスタイリッシュで中身はスマート。画質もめちゃ綺麗だし、起動もめちゃ早い。まさに新時代のマシーンだね、よくわからないけど。

 

だけど、だけれども、キーボードが慣れない。

どうもタイピングのリズムが合わないというか整わない。もっとガシャガシャ感が欲しいというか、富士通感がほしい笑

この文章もMacBookで打っているが、違和感が強くて使いやすいとは言い難い。

 

ふと足元で埃を被っていた相棒を広げてみた。MacBookと比べると重くてうるさくて遅い、誰が見ても時代遅れの代物。何も入れてないのにブルーレイが読み込めるドライブが唸り出す。ログイン画面でパスワードを打ち込もうとした時、特に理由はないのだけれど視線を指先に落とした。7年間叩いてきた黒いキーボード。その表面は薄く削れて光沢が散っていた。

その中でも一際輝くa,i,u,e,o

いままでお疲れ様。ありがとう。

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