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やるせない26歳が綴るこれは独り言

親が人間だって何歳のときに気付きましたか?/『保育園義務教育化』(古市憲寿)

 保育園義務教育化(古市憲寿) 小学館

 『親が人間だって何歳のときに気付きましたか?』

古市さんが書く本はいつも不意を狙った顔面パンチから始まる。

 

 保育園義務教育化(古市憲寿) 小学館

 

革命家を匂わせる強烈なタイトルだが、けして赤く染まった暴論ではない。

今の日本の保育制度、子育て環境、国の支援事業について真っ向から言及し、世代間ギャップを拭いきれない頓珍漢なこの国を批判する。

また、少子化問題や母性本能神話問題にも鋭い角度から批評する(もう批判みたいなものだけど)こういった日本が抱えている多くの社会問題は保育園義務教育化で解決できるかもしれないと古市氏は主張する。

 

世界の義務教育

そもそも保育園の義務教育化は珍しいことでもないらしい。

ハンガリーは3歳からの義務教育期間を設けており、またフランスでも今2019年2月14日に3歳からの義務教育が決議された。

義務教育の開始年齢3歳に引き下げ 批判はいまだに | FRANCE 365:最新のフランス旅行情報・現地情報

 

そもそも義務教育の期間自体、国によって大きく違う。

日本は6歳~15歳までの9年間。お隣の中国、韓国も同じだ。

しかし、教育を重んじる(意味深)北朝鮮は6歳~17歳の11年間である。

また発展途上国は期間が短く5年前後であることが多い。

アメリカは州によって違うし、5歳~16歳までが義務教育期間だったイギリスは2015年に義務教育延長が決まって5~18歳までの13年間になった。

 

世界の義務教育期間は9年と決まっていない。

そして義務教育期間が変更されることも、珍しいことではなかった。

 そもそも義務教育を9年間と定める教育基本法、学校教育法は約70年前の1947年に制定されたものだ。70年前と今では子供が育つ環境も、家族の在り方も、国の状況も変わっている。化石みたいなルールは今の日本を支えることができるのか。甚だ疑問である。

 

保育園を義務教育化することのメリット

 

古市さんがここで主張するのは幼少期の教育、乳児期からの義務教育だ。高等学習的計画性を持った学習の延長ではない。

 

意欲、忍耐欲、想像力などの生きるために必要な力である「非認知能力」幼少期に集団の中で身につくものとされている。そういった根本的な学力やIQは乳幼児期に確立され、成人を迎えてからその能力を高めるのは非常に難しいとされている。

この「非認知能力」が高い人は「成功」する確立が高いとアメリカの研究機関が発表している。保育園教育はめりゃくちゃ重要ということだ。

つまり、幼いうちから教育を始めた方がコスパがいいと古市氏は言う。

 

また「子供は母親といるべき」思想がいまだ日本は根強い。

確かにできるかぎり傍にいること。それは望ましい母子の在り方なのかもしれない。

だが今では共働きが珍しくなくなってきた。

24時間働ける多くのサラリーマンが汗水流して、妻を養える収入がある。我々はもうそんな古い世代に生きてないのだ。男一人の労働だけでは賄えず、働かなくては生活ができない家庭も少なくない。だが乳児のうちから保育園に預けようとすると「子供がかわいそうだ」等の批判を女性は浴びる。

 

なので保育園を義務教育化する。義務化することによって「しょうがなく預けている」という建前ができる。負い目を感じることなく、生活のために、自分の選択をできるのだ。(だけど待ち受けているのは育休復帰問題。大丈夫かこの国…)

 

 

感想

なんて素敵なこと尽くめじゃないか、保育園の義務教育化。

そもそもこの国はルール的にも価値観的にも子育てをする女性に優しくないなと思った。

そもそも本当に少子化を問題視しているのだろうか。政治家は天に召されるグリーン券を発行済みの人ばかりだから、いかに余生で楽をするかといった老人向けの政策ばかりに走っている気がする。まぁ投票してくれるのが歳いってる人ばっかりだから、当選するためには若者に訴えるよりも、平日の昼間に井戸端会議してる人達に向けて熱弁した方が票は稼げるしね。ある意味、投票にいかない私たち若者世代にもこの国を堕落させた責任はある。

また、子育ては女性がすべきという抜けきらない昭和の価値観。それは令和に生きる私たち男性も少なからず根付いてしまっていると思う。そもそも男性は育児休暇がとても取りにくい。求人票の情報に男性の育休取得率が10%前後であれば多いとさえ感じるほどだ。その結果、世界的に見ても日本男性の育児参入時間は先進国の中でもダントツで低い。働き方改革の前に、意識改革が必要かもしれない。

 

 

まとめ

と、こんな感じに幼児教育を軸にして日本を世界の国々と照らし合わせながら批評していく。日本が経済のみならず子育て支援的にも遅れを取っている(というより終わっている)か再確認することができるだろう。

少子高齢化問題から目を背け、とうとう国の崩壊が免れないことを告げる死の人口ピラミッドを形成してしまった日本。そんな国で生きる私たちにとって、自分の子供という存在はそう遠くもない話だろう。果たして私はどんな子育てをしているのだろうか。10年後、国がアジアの植民地にされ、自分が亭主関白になっていないことを心から願う。

 

 

ちなみに一番好きな章は「第5章 草食男子が国を亡ぼすというデマ」に書かれた『本当に昔の若者はセ〇クスをしていたのか』。当時発刊されていた若い男の子向け雑誌の異性に関する記事から当時の「性との向き合い方」について考察する。この章は古市節がキレッキレで抱腹絶倒必須だ。ぜひ読んでいただきたい。少子化問題の一環としたお話である)