【読書の秋】9月に読んだ本まとめ【12冊】
9月に読んだ本まとめ
9月ももうおしまいですねー
今年も残り3ヵ月。早いのなんのって言ってる間に1か月がすぎちゃってちゃんと夏と別れの挨拶もできませんでした。
さて秋と言えば読書の秋!
過ごしやすい空気のなか外で開く物語もまた格別ですねぇ…ということで今月読んだ本を簡単にご紹介します!
『りゅうおうのおしごと!6~9』白鳥士郎
夜叉神天衣。わずか十歳にしてタイトル挑戦を決めたシンデレラは、両親の墓の前で誓いを立てていた。「お父さま、お母さま。必ず女王のタイトルを手に入れます…私たちの夢を」しかし彼女の前に立ちはだかるのは、史上最強の女性棋士にして師匠の姉弟子ー空銀子。二人が争うのは女王のタイトルだけなのか、それとも…?“浪速の白雪姫”と“神戸のシンデレラ”が遂に激突!アニメ化も果たしますます過熱する盤上のお伽話、家族の絆と感動の第9巻!シンデレラの頬を伝う一筋の涙を、若き竜王の飛車が拭い去るー!!
りゅうおうのおしごと!9巻 あらすじより
辛い物を食べたら甘い物を食べたくなる。ドロッドロ熱々の餡かけ五目チャーハンを食べた後は、冷たくて甘々のフルーティプリンを食べたくなる。それは読書も同じで、鈍重で暗い物語のあとには軽快で明るい物語を読みたくなるものだ。
なので私は胃もたれを起こさぬよう一般小説とライトノベルを交互に読み進めていく健康的な読書スタイルをとっている。
私は分銅を付けた釣り鐘を心臓に深く引っかけるようにジワジワ苦しめてくる作品が大好きだ。「うえぇ……いくらフィクションとはいえ、こんな話を想像してるとか…同じ人間として軽蔑するわマジ……ああ素敵!」と興奮かつ悶絶しながら読むのだが、だいたいそういう作品は言葉を追うのにとても体力を使う。(特に女性作家さんが描いた作品)
そんな時、癒しが欲しくなる。お目目くりくりの可愛い女の子が見つめてくる表紙を手に取ってライトノベルの世界へ逃げたくなる。
ライトノベルは物語のテーマも分かりやすいし、改行も多く文体も軽いからなにより読みやすい!あぁ^~リズミカルなセリフに壊れかけの頭の中が洗われていく~、天衣ちゃん萌え萌え~(by23歳)
長らく私は「萌え」を出来上がった料理の一つだと思っていた。しかしこの作品、りゅうおうのおしごと!を読んで確信した。萌えは料理ではない。「萌え」は調味料だ。ほんとひとつまみで笑顔にさせる旨味を持った萌えはまさに「砂糖」それだけ舐めても十分美味しいが、様々な食材と混ぜ合わせることによって料理になり、さらなるおいしさ、新しい旨味を生み出す。
りゅうおうのおしごと!は「萌え」×「熱さ」の混ぜ合わせによって従来のライトノベルをはるかに凌駕する新しい料理を作り上げた。美少女が微笑む表紙を見て甘みだけを期待して口に含めば、あとからやってくる刺激に驚くことだろう。
将棋の世界で行われる才能のぶつかり合い。
この可愛いプロ棋士たちの物語はけして甘くはない。熱いのだ!
『絶対に勝てない』と思われる相手と盤を挟む時、まず必要なのが『絶対に勝てないなんてことはない』という状態までメンタルを持っていくこと。
りゅうおうのおしごと!9巻 P.134
『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。2』しめさば
ヤケ酒の帰り道に、家出JK・沙優を拾ったサラリーマンの吉田。そのまま始まった微妙な距離感の同居生活にも慣れてきた頃、沙優から“お願い”を切り出される。「バイトをさせてください」「いいぞ」「いいぞって!…え、いいの?」遠慮ばかりだった沙優が「自分のやりたいこと」を教えてくれた。それだけのことがなんだか嬉しい吉田。そんななか、元片想い相手である後藤さんに、なぜか2人きりの夕食に誘われてー「吉田君のお家に行きたいって言ってるんだけど」サラリーマンと女子高生の日常ラブコメディ第2巻。
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。2 あらすじより
まず、絵が可愛い。50点。
ヒロイン(表紙の女の子)のキャラも可愛くて魅力的。49点。
ヒロインの名前が沙優(さゆ)。響きがとても良い。ボーナス1点。
つまり100点の物語です。満点の物語に何か語ることがあるだろうか。
冗談?はさておき、たぶんアニメ化の話も水面下で進んでいるんだろうなぁと思って言うこの作品。タイトルからお察しの通り、典型的な妄想垂れ流しラノベです。(前回もそう紹介した気がする)家出の女子高生と同棲ねぇ……んーまぁいけない関係って感じで興奮する安直ではあるけどなにか物語を動かす環境設定としてはめちゃくちゃ使える。そこでエロいほうに振り切っちゃうとただの官能小説になるから、作者は下品なものとはうまく線引きをして、ヒロインの背景を軸に物語を展開している。家出をした理由を中心に過去の情報がぼかしているから伏線もめっちゃくちゃ撒かれてるし、家出後の生活では「繋がり」は不可欠だから必然的に過去の相手、友人、そして親の登場と話も作りやすいし家出少女って一方的に書くのであれば書きやすいテーマなのかもな。
ちなみにJKヒロイン以外のヒロインもみんな可愛い。
『何者』朝井リョウ
おまたせしました。一般小説のターンです。
本棚の奥から出てきた本。何気なく読んだそれはとても面白くて、久しぶりにブログで語ってしまいました。
また一年後は違った感想を持つんだろうなと期待しながら、またしばらくは本棚の奥で熟成させておきます。
「なんかみんなさ、すげえ考えてんの。これからの出版業界のこととか、どういう企画やりたいとか、すげえ熱く語れんの、すでに」
十数時間前、光太郎は、会社の同期に初めて会った。昼に人事部を含めて食事会をして、そのあとは同期だけで夕方までファミレスにいたという。
「それ聞いてさ、俺、思ったんだよね」
信号が青になる。
「俺って、ただ就活が得意なだけだったんだって」
何者/朝井リョウ p.291
『何様』朝井リョウ
何者の続編…ではなく、どちらかといえば補完する物語。
就活が軸になっていた前作に比べて、こちらは様々な「社会」の葛藤を描いている。短編集になっており、今作から読んでみても全く問題はない。
こうした短編集を読んでいると、ほんと作家の筆力には驚かされる。一体この作者は人生何週目なんだろうと輪廻転生説を信じてしまうほどのリアリティを持っていたりする。それを年代だけではなく性別をも超えた視点で語るのだから語彙力とか頭の良さとかそういった名前ある能力以前に「何か」が一般人と違うんだろう。凄いなぁと尊敬する反面、少し悔しかったりする。
「きっかけとか覚悟とかって、多分、あとからついてくるんだよ」
何様/朝井リョウ p.182
『地球星人』村田紗耶香
はいでました。軽蔑尊敬する作家さん!
前回紹介した芥川賞受賞作「コンビニ人間」で有名な村田沙耶香の最新作。文庫本主義の私が厚手の本で買っちまったよ。だってあらすじ読んだらめっちゃくちゃ「やばそう」なんだもん。
私はいつまで生き延びればいいのだろう。いつか、生き延びなくても生きていられるようになるのだろうか。地球では、若い女は恋愛をしてセックスをするべきで、恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろうー。常識を破壊する衝撃のラスト。村田沙耶香ワールド炸裂!
地球星人/村田沙耶香 あらすじより
あらすじだけ漏れ出すこの狂気感。いいよね。
一人の視点を追った先にあったのは一つの価値観。それは私たちに新しい気づきを与えてくれる。って一応勧めるスタンス取ってるけど真面目に結構きつい描写があるので、ほんと人を選びます。ふとその光景がゆっくり頭に浮かんできて、ある言葉に目が移った瞬間、鮮明にそのシーンを想像してしまった自分に嫌悪感を抱く。それが今回は多かった。面白いんだけどね。
『若者の法則』香山リカ
ここで新書を1冊。
2002年の本なので、書かれているのはスマホどころかネット環境にすら頼ってなかった当時の若者だ。なのでインターネットによって生活環境が内側から大きく変わった「今の若者」に照らし合わせるのは難しいだろうなと考えながらページを開いた。
結論から言おう。
17年前とあんま変わってね。
若者が無意識のうちに求めているものはそう簡単に変化をしないような。もちろんその手法やアプローチの仕方は大きく変わったが、若者が持っている帰属意識や10代の感覚は今とそう相違はなかった。
若者が理解できない大人の指南書として書かれた『若者の法則』。そもそも大人も若者だったのだから気持ちがわかるはずじゃないか!と若者は期待してるけど、なぜだかどうして分かり合えない。環境が変わってもそれはいつの時代も同じなんだなぁ。
『また身の下相談にお答えします』上野千鶴子
日本のジェンダー論を代表するお方、上野千鶴子先生のお悩み相談室第二弾。
頭のすごく良い人がキレッキレで提案する中に散りばめられた独自のユーモアとワードセンス。芯がカチカチに固まった意見を相手に叩きつけるのではなく、相手の気持ちを汲み取り、諭すように言葉を重ねる。これまた作家とは違った嫉妬の対象なんですわ…
やはり知は力なんだなぁ。
(質問を)よく読むと、(あなたが)ほしいのは「休日におしゃれをして食事をして映画に出かけ、小旅行をする」程度の相手。これならつつましい望みです。そんなものを恋愛と勘違いしてはいけません。恋愛はもっと自我に食い込む闘いです。
p.176
『孤独とセックス』坂爪真吾
古本屋で目があった叫びが忘れられず購入してしまった曰く付きの本。(流石に綺麗なやつを買った)
タイトルは直球……というか今更カタカナ4文字で恥ずかしがってる年じゃないわな。一過性の経験で満足を重ねるのではなく、そろそろ真面目に向き合わなきゃいけない。
その内容はいたって大真面目。
小手先のテクの伝授などは一切なく、質問形式で1つ1つ丁寧に回答していく。10代の時に抱えていた性の悩みにここまで正面から向き合ってくれた本が今まであっただろうか。
ここでは水商売と風俗について語られた章をなぜか熱心にまとめていたので簡略化して載せておく。
2-6
水商売
若い女性とのコミュニケーションが売られている。瞬間恋愛、疑似恋愛。
⇨孤独や不安の埋め合わせで利用すると「レンタル」にのめり込む
その後の変化⇨虚しさ。ストーカー。
①ガールズバー(適度な距離感がいい、まぁ安い)
カウンター越しのコミュニケーション
②キャバクラ(非現実感が強い、気持ちの高揚)
隣に座ってのコミュニケーション
風
男性にとっての一種の桃源郷。
しかし虚しさを感じるのはなぜか。
・事務的なサービス感
・独占できない苛立ち⇨女性への強い支配欲
・元を取ることにこだわっている
女性への一方的な期待感??
①デリヘル
ヘルスサービス⇨挿入行為を含まないサービス(性交類似行為)
②ソープ
本番行為有(女性と男性客の自由恋愛という建前で売春防止法違反から逃れている)
性的な孤独から抜け出すための3つの欲求を満たす必要がある。
①性欲⇨射精による即物的な欲求(風俗)
②性交欲⇨気持ちの通った相手のセックスによって満たされる欲求
(ビジネスである限り不可)
③関係欲⇨好きな人との会話と恋愛によって満たされる欲求(ガールズバーなど)
3つを満たすサービスは存在してない。
※セックスフレンドは男性から見てまさに理想的かつ便宜的な異性関係?
書いてある情報をまとめ、ところどころに自分の意見なんか並べてほんと勉強熱心である。面白いよねこういうの。
「世の中には、答えのない問いがある」
p.127
『対岸の彼女』角田光代
このブログでは毎度お馴染み角田光代さん。
過去に3作も紹介しちゃって、もうすでに立派なファンですな。
結婚と子育て。女性がもつ「当たり前の環境」は気づかない間にゆっくりとズレを生じさせる。見えないところで魅かれ合っていた彼女たちは確かなきっかけがわからないままその亀裂の中へと落ちていく。
女性が持つ繊細な視点で友情を紡ぎ、過去と現在で変化していく少女と女性の切なく甘く苦しい傑作長編。恋愛物ではないので、甘々なものが苦手という方にもおすすめ。直木賞受賞作です。
「ひとりでいるのはこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことの方が、うんと大事な気が、今になってするんだよね」
p.112
おわりに
ざっと5000字で語りました。引用が沢山あるから全部が全部自分の言葉じゃないけどね。そろそろ秋本番。読書の秋のおともにどれか一冊いかがですか。
つかれた…