淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

【映画】クレヨンしんちゃんモーレツオトナ帝国の逆襲を観て。

しんのすけ『お帰り!とーちゃん、かーちゃん』

~~~ED♪(小林幸子)~~~

俺「(´;ω;`)ウッ…」

 

クレヨンしんちゃんモーレツオトナ帝国の逆襲

上映時間 89分

公開 2001年4月21日

興行収入 14.5億円

 

久しぶりの映画記事

アマゾンプライムに突然おすすめされたのは映画クレヨンしんちゃんシリーズ。

ゲームオブスローンズに染まり切った私のプレイリストを見てなにをどうした結果Amazonが私にしんちゃんを勧めてきたのか分からないが、その中のある一作を見つけた瞬間、息が止まるような懐かしさに襲われた。そこには傷だらけになりながら懸命に走るしんちゃんの姿。

俺「あー……この作品のビデオ持ってたわ…」

それは『クレヨンしんちゃんモーレツオトナ帝国の逆襲』。

子供のころに買ってもらったものは意外と記憶している。色あせるまで遊んだおもちゃはもちろん、ファミレス入口に撒かれているチープなおもちゃでさえはっきりと覚えているものだ。

たしかこれは、「クレヨンしんちゃんアッパレ!戦国大合戦(これもめちゃくちゃ面白い)を観た映画館でお父さんに買ってもらったビデオだっけか……

縁だけがはっきりしている消えかけの絵画みたいな記憶をビデオデッキに押し込むように、俺は再生ボタンを押した。

ダメダメ大人はなんでもダメダメ

OP『ダメダメ大人はなんでもダメダメ♬ ダメダメダメほらまたしんちゃんダメダメこーしなきゃダメダメ♬ ダメ♪』

 

俺「ああーー、こんなオープニングだったわ!」

 

しんちゃん『ソレって大人の都合なんじゃないのー?♬』

 

俺「……なんて痛いツッコミなんだ」

確かに聞き覚えがある懐かしい歌に「大人」を実感させられ早くも瀕死状態。


クレヨンしんちゃん だめだめの歌

 

「懐かしいって、そんなにいいものなのかなぁ……」

物語冒頭、万博に訪れた野原一家。懐かしい光景にひろしとみさえは子供そっちのけで楽しんでいる。それは野原家に限らず、春日部に住む大人全員が哀愁漂う空気にどっぷりとハマっていた。

親がはしゃぐ姿に辟易するしんちゃん+春日部防衛隊のメンバー達。

その光景に不気味さを覚えた風間くんが一言。

風間くん『懐かしいって、そんなにいいものなのかなぁ…』

 

俺「いいものなんだよっ……!」

 

さらに追い打ちをかけるように風間君がもう一声

『このままじゃママがママじゃなくなっちゃうような気がするんだ』

 

うぐっ。これは痛いセリフだ。

親がはしゃぐ姿は幼い自分にとって確かに不気味だった。

オトナは「オトナ」であって子供ではない。子供のころは「オトナ」という立場に絶対的なものを感じていたから、自分の親がふと旧友同士の間で交わす無邪気な表情、まるで子供のような笑顔する姿には薄気味悪さを感じていた。

無意識的に子供はある程度年上の人間が「オトナ」であることを望んでいるのだろう。しかし、大人に片足つっこんでしまった年齢になった今ならわかる。年を取ったから「オトナ」になるわけではない。ある日を境に「オトナ」になることもない。そして「オトナ」の延長線上に「親」があるわけではない。

しかし今や「オトナ」として振る舞うことを子供たちから求められる。

いつまでも足踏みしているのは現役の子供たちが許してくれないのだ。

憎めない悪役 ケンとチャコ

昭和の雰囲気に包まれる万博の世界。

20世紀への逆戻りを企てる今回の悪役ケン(男)とチャコ(女)が腕を組んで木造の建物が軒を連ねる商店街を歩く。

 

ケン『外の世界がこの町と同じ姿だったころ人々は夢や希望に溢れていた。21世紀はあんなに輝いていたのに、今の日本に溢れているのは汚い金と燃えないゴミくらいだ』

 

本作で二人は悪役という立場だが、彼らの狙いは悪役にありがちな身勝手で一方的な欲望とは遠く離れたところにある。

ケン『もう一度やり直さなければならない。日本人がこの町の住人のように「心」を持って生きていたあのころまで』

チャコ『未来が信じられたあのころまで』

 

今の若者はけして希望の中を生きているのではなく、妥協と納得の狭間でくすぶっているように思える。

虚像の経歴を持った者同士のマウントの取り合い、お金をばら撒くという言葉に釣られる情弱、マスコミの作為的な映像編集。様々なものが見えすぎる中で、それでも見えないものが「未来」のはず。なにも知らない、分からないからこそ信じることができる「未来」。

今見ている世界は汚く濁っているはずなのに、先が見えないはずなのに、「廃れた未来」の輪郭がはっきりと浮かんでくる。

俺も「あのころ」まで帰りたいよぉ😭

ひろしの人生

懐かしい臭いに洗脳された野原ひろしが自分の足の臭いを嗅いで記憶を取り戻すシーンは涙なしでは見られない。(この文言だけだと意味不明で面白いけど(笑))

BGMと映像で紡がれるひろしの半生はどこにでもありそうな、思い出の連なり。確かに未来へ歩んできた軌跡を振り返りながら20世紀から21世紀へと、「昔」から「今」へと記憶が戻っていく。

自分も何かをきっかけに大きく過去を振り返ることがあるだろうか。そして同じように目の前にいる息子や娘を抱きしめることができるでだろうか。とりあえず足が臭くならないことを祈ります。


ひろし泣ける名シーン!

 

感動のクライマックス

チャコ『どうして、ねぇどうして! 現実の未来なんて醜いだけなのに…」

しんちゃん『おら、とーちゃんと、かーちゃんと、ひまわりと、シロと、もっと一緒にいたいから……喧嘩しても、頭にきても、一緒がいいから……あと……おら、おとなになりたいから……大人になって、お姉さんみたいな綺麗なお姉さんといっぱいお付き合いしたいから!!』

 

大人になりたい。そう最後に思ったのはいつだろう。

綺麗なお姉さんとのお付き合いはまだ達成できていないので、俺はまだ子供なのかもしれない。

大人ってなんだろう。お姉さんといっぱいお付き合いすることは、大人なのかな。俺は大人だと思う。

結局、大人っていつも自分の先で手を振り続けている。だけど歩いても歩いても距離が近づくことはない。けど、離れることもない。歳を取ったなぁと思うけど、大きくなったと思うけど、女性とお付き合いできるようになったけど、自分でお金を稼げるようになったけど……手を振る影と自分が重なることはない。

大人になるって難しいなぁ…

まとめ 


『今日までそして明日から』吉田拓郎

物語の最後で流れる吉田拓郎の名曲「今日までそして明日から」

独り言のように自分の人生を振り返っているこの曲にもやっぱり歌を届ける相手がいる。

ああ、誰かと歩む未来に明日。

希望って意外と身近にあるじゃない。

 

 

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銀座にて。