淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

子供の味から離れてゆく

 子供の味から離れてゆく

 赤いペットボトルがプシュっと快音を立てた。俺はそれを一気に体内へ流し込む。粘りっこい甘みと弾ける炭酸が同時に口の中に広がり、胃に流れ落ちていった。蓋が開いたペッドボトルぶらぶらさせながら、ギャルのタイツにちらっと目を落としながら、自販機横のゴミ箱に体を預けながら、俺はJR品川駅四番ホームで次の電車を待つ。

 昔からこれは好きだけど、お酒を飲める歳になってからさらに飲む頻度が増えた気がする。まるで大人の苦味から逃げるように、子供の甘みに縋るように。ま、なんとカッコつけようと単純にコーラが好きな23歳と言ってしまえばそれだけの話なんだけど。そしてコーラに口を付ける。

 今日みたいな寒い日は厚着をして出かけるのだが、いつも少し歩いただけで汗をかいてしまう。だったら少し薄着になるなり調整をすればいいのだが、その匙加減がいまだによくわからない。少しだけコーラを飲みたい、汗をかくとそんな気分になる。しかし自動販売機の左上に佇む500mlはオーバーサイズだ。飲み切れない。だが左下用意されている280mlを130円で購入するほど俺のケチ精神も衰弱していない。結局、”お得な”500mlを選んでしまうのだけれど、駅の自販機は160円と割高なのでお得でもなんでもない。そしてコーラに口を付ける。

 23歳にもなって100円レベルで脳内葛藤している私。自販機に薄く映る自分の姿と思い描いていた大人とのギャップに涙が出てくる。コーラの落下音と共に表示された「¥8162」の文字だけは堂々としていて、変な息が漏れた。なんでこんなにチャージしたんだろう。そしてコーラに口を付ける。

 聞き慣れたメロディーがホームに流れ、電車の到着を知らせる。もう一度、ペットボトルに口を付けて子供の甘みを堪能する。結構飲んだ気がするけど、まだ中には半分以上残っていた。もうコーラには口を付けない。

勢いよく流れていく車窓をぼーっと見ながら、ゆっくりとしっかりとペットボトルにフタをした。

 

ため息をつくように電車のドアが開く。

私は残ったそれをゴミ箱に投げ入れて、一歩、二歩と前に進んでいった。

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p.s.これは不味い。

900文字くらい 30分