いつまでも
クリスマスに向けて着飾った街でさんざめく喧騒は不思議と暖かい。白い息を吐きながら赤信号の前に立ち止まる。車の濁流に乗った寒波を正面に受け体を丸めながら青色を待つ。
横には同じように体を震わせ足踏みしている少女がいた。俺の肩ほどの背丈の少女が「さむっ」と恨めしく呟きながらほわっと新雪のような息を小さな両手に広げる。ぼーっとその様子を見ていると透き通った瞳で俺を見つめて返してきた。
「今日はどこ行くの」
「いや、特に決めてないけど。なにか食べたいものある?」
「なんでもいい……って答えは一番困るやつだよね」
「だね」
どこにでも転がっている何気ない会話一つでも彼女の前だとつい綻んでしまう。秋はその姿を見せないまま日本の季節は冬に入ろうとしている。青信号を待っている人たちはみな厚手のコートやジャケットを羽織り冬の装いをしている。秋物だけでこの景色に混ざる人はここにいない。隣の彼女も色こそ秋らしい淡いベージュのロングコートに顔を埋めて頭から爪先まで完全防寒の冬装備だ。対する俺はダウンジャケットのスカスカに開いた襟首を摘まみ上げて今夜の店を考える。
「いつもと同じ居酒屋だとつまらないだろ。あそこのイタリアンも行ったし、あの店はあまり美味しくなかったし……」
この街で過ごした時間はけして短いものではない。自分のホームグランドでもあるこの街は俺に人の生き方から喜怒哀楽に括られない感情まですべてを教えてくれた。胸を張って言える、俺は役所の人よりこの街を熟知していると。それもただの知識ではない長年の経験に基づく知識を蓄えているのだ。
が、逆に言えばこの自慢の街は俺にとって目新しさに欠ける街となってしまった。もちろんこの街全ての店を制覇したわけではない。まだ見ぬ名店をきっとあるのだろう。しかし食べログ評価3.5以上の店は全て足を運んじゃったし……と、頭を抱えながらもとりあえず食べログのアプリを起動させて検索を行う。かじかんだ指先では画面の文字をうまく捉えることができない。えっと、エリアは現在地。それでジャンルはー……
「あー、もう寒いからいつものとこでいいよ!」
つま先をたてて一生懸命画面を覗き込んでいた彼女がぷいっと前を向く。
「いや、たまにはおしゃれなところを……」
「この街にそんなものはありません。そんなの一番知っているでしょ」
信号を眺める彼女の横顔は柔らかい。どうやら怒っているわけではないらしい。洪水のように流れていた車道はゆっくりと落ち着きを取り戻し、信号が赤から黄へと変わっていく。
「今日もいつも通り飲んで、帰りにコンビニでケーキでも買って帰ろうよ。あっ、ローソンで売ってるシュークリーム知ってる?クリームがいっぱい入ってるやつ!」
「あー、知ってる知ってる。なら、帰りはそれを買うか」
青色が進めと俺たちを促す。
季節が変わっても、着る服が変わっても、変わらなかった日常。前を歩く彼女の背中をベージュのキャンパスにして幸せな将来を思い描いてみる。そこに描かれたのは今と変わらないの俺たちだった。「いつまでもこんな日が続けばいいな」口の中で溶けていったその言葉を飲み込み、俺は一歩踏み込んで隣に並ぶ。
「ケーキと!それね。2つとも食べるから」
「はいはい」
肩と小さな頭を並べて2人は街の光に包まれていった。
1383文字 30分
寒い!
最近寒くね?めっちゃ寒いよね。
顔面に当たる風が寒すぎて涙が出てくる(´;ω;`)ウッ…
そしてクリスマスが近くなってきた。
クリスマスって騒ぐのは馬鹿馬鹿しいって思ってた時期もあったけど、「俺、仏教徒だし」なんてクソつまらない言い訳をして気取ってた時もあったけれども、この年のこの時期は寂しさを感じる時期なんだね。
ところでクリスマスのプレゼントってなにが1番いいんでしょうか。無難なのは(デートに誘う口実も兼ねた)ディズニーペアチケットでしょうか。クリスマスに限らず12月のディズニーランドは1.25倍増しで楽しい。そして好きな人といったらいつもの∞倍楽しいよね(表現が小学3年生)。久しぶりに行きたいな、なんか「ディズニー」の文字を打ってたら色々思い出してきた。
なんの脈絡もない話になってしまった笑
みんな楽しい12月を送ろうぜ。
あと忘年会しましょ。
(煌々と光る月)