淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

秋の音

足底で何かが潰れた。その乾いた音は秋の音。季節の足音は比喩表現ではなく実際に聞こえてくる。

素肌を晒す格好はハロウィン以降見かけることがなくなり、20℃を下回ることも多くなってきた。この時期になると街の景色は落ち着いた暖色に染まり、ベージュのコートを羽織った自分もまたその中にゆっくり溶けていく。足元で踊る落ち葉は染まる季節を前に散ってしまった脱落者。乾いた風に首根を刈られ、水分も生気も奪われた彼らは不規則に吹きつける風のリズムに合わせ冷たいの地面を舞台にステップを踏み続ける。

どうやら私は薄汚れた革靴で彼らのステージに乗り込み、慈悲なく踏みつぶしてしまったようだ。強く吹き付けた風に乗ってその残骸は一斉に車道へと移動する。そして小石が混ぜ込まれた痛そうなアスファルトの上で再び体を動かし始めた。ぼっーと眺める私の前をけたたましい音をたてて何かが通り過ぎた。

目の前には潰れる音すら残っていなかった。

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