淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

傘を持って、右手。

右手首に傘をぶら下げながら地下を歩いていると、ふと普段の右手の位置が気になった。今は傘が手首から滑り落ちぬよう肘を直角に曲げて腰の位置に据えているが、普段はどこが右手の定位置なのだろか。かじかむ指をポケットの中に差し込んでる気もするし、かじかみながらもポチポチ(ところでスマホをいじる時のオノマトペってなんだろう)スマホをいじっている気もするし、足の動きに合わせてただ前後にぶらぶらさせている気もするし、まぁなんだっていいんだけど。

右手の位置を気にし出すと今度は左手の位置が気になり、ふとその方向に目を向けるとポケットの中で佇んでいた。なら普段右手もポケットにしまっている違いない。いやほんと本来の手の位置なんてどうでもいいのだけれど。

そんな無碍なことを考えながら混雑している駅地下を縫うように進む。すれ違う人、肩がぶつかった人、同じ方向に進む人、ホームで電車を待つ人。みな片手には濡れた傘。

びしょ濡れになった電車が白い息を吐きながらやってきた。

ドアが開くと同時に紺色の学生服が勢いよく飛び出てきた。空っぽの右手で、改札に向かって走っていく。

車内の手すりにかかったビニール傘が後ろ姿を見送った。

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(498文字 30分)