淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

雨模様と土曜日と喫茶店。

私は家で集中できない人なので、いざ勉強しようと決めたらトートバックに一式詰め込んでもっぱら行きつけの喫茶店に向かう。

そこは池袋にある某喫茶店アメリカンな装飾が施されたおしゃれな店内はいつも大音量で洋楽が流れている。この騒がしさが逆に集中できるのだ。私はいつも通りアイスコーヒーと軽食を注文して、いつも通り窓際のカウンター席に座った。そしてまたいつも通りコンセントにiPhoneの充電器を差し込んで、新品の匂いがするテキストをバックから取り出し、早くも汗をかき始めたアイスコーヒーにガムシロップを投入する。

まだ頭が勉強モードに移行しない私はストローを口に付けたまま何気なく窓の向こうに目をやった。曇天、跳ねる雨粒、行き交う傘。梅雨空の街を物憂げに眺めていると、瞬間大きな瞳と目が合った。濁った景色の中ではっきりとこちらを眺める少女と目が合った。私は慌ててテキストに視線を落とす。な、なに、恥ずかしがってるんだ俺は。こういうのは意外と気まずい。知らない人と目が合うだけでも気まずいのに、ぽけーっと完全に気を抜いている表情が見られてしまったから恥ずかしい。つまり気まず恥ずかしい。鳥肌が立つような気持ちに心臓がくすぐられながらも、落ち着きを取り戻すため縋るようにペンを握る。

洋楽だけが流れていた店内に久しく「いらっしゃいませ」の声が響いた。その声の先を追うと、そこで茶色い目をした少女が傘を畳んでいた。あばばば。落ち着いた色のチュニックとデニムのコーデ。ガラス戸を通して見た時よりも大人な印象を受ける。少女と女性の狭間にある不安定な…(これ以上語るとキモいので自重。

彼女は迷うことなくスタスタとレジに進んで、慣れた様子で注文を済ませる。そして透明な麦茶、いやいやあれはアイスティーだ、を片手に持ってこちらに、私の方に真っ直ぐ向かってきた。

そして彼女は席を探すそぶりなく、

こちらに近づいてきて、

隣に、

私の隣に、

座った……

 

が、残念。

ソーシャルディスタンス。

隣との距離がめっちゃ遠い。

なんやねん、この隙間は!!

3mくらい離れてるやん!!

 

わかってた。何も起きないとわかってた。だけど、

だけどいつもより背筋を伸ばしてペンを握る、雨の日の土曜日。

集中、離散を繰り返す喫茶店

何も起こらないけど、何もないわけではない。

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