タバコを飲むということ
おはようございます。
カーテンを開けると曇天が広がっていました。まだ雨は降りそうにありません。
私は起きたらまず最初にタバコに火をつけます。"まず最初"の前にも瞼を開ける等の肉体動作がありますが無意識に記することはとんでもない表現力を必要とするので省略しました。。
タバコに"火をつけます"にも語弊がありました。私は加熱式タバコを使っているので、火種は必要ありません。充電されたデバイスにタバコ(もはやこれもタバコと呼んでいいか不安だが)を挿入して、一つだけ置かれた丸いボタンを長押しする、その"作業"だけが必要です。
朝に飲むタバコは格別に美味しいです。ありきたりな言葉を借用すれば"澄んだ空気"ですが、はたして大都会東京の景色を眺める私がこの表現を使うのは許されるでしょうか。
タバコを"飲む"と表現するのは三島由紀夫の影響です。しかし"作業"だけを必要とする加熱式タバコが運んでくるのは煙ではなく水蒸気です。タールを含まない健康的な煙をかこつけて"飲んでいる"小生を三島先生は鼻で笑うでしょう。
そういえばこの不健康な趣味のきっかけは尾崎豊でした。少しでも憧れに近づきたいという青年の熱量が音楽ではなくニコチンに走ったのは些か残念ではありますが、ヤニに犯されることなく健康体のまま年齢を重ね、今年彼と同い年になると思うと感慨深いものがあります。きっと彼も水蒸気を飲む我々を見てニヒルな笑みを向けるでしょう。
白い息と独り言を登り切らない日の元に吐き出して私の休日の始まります。私を作り上げてきた故人に思いを馳せ、彼らが生きていたら…と無下な想像しながら、静かに目覚めを待つのです。