淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

祈り

26年生きれば大概の日常に既視感が生じる。小さいトラブルは経験則にならえば解決できるようになるし、ヤバそうな案件も「まぁこれなら大丈夫っしょ」と気持ちを割り切れるようになった。10代に比べれば抱えるものは多くなったが、その重さからなんとなく中身を想像できるようになっただけ不安は軽くなったと思う。

それでも”初めて”はふとした時にやってくる。これまでの経験が全く通用しない未知の事柄。この年になると「わからない」は「怖い」。無知の知にワクワクできる余裕なんかない、逃げられるなら逃げたい、答えを教えてくれる人が隣にいてほしい。そんな淡い期待は期待で終わる。初めて赤子が火を前にした時のような瞳で見据え、そっと初めてに触れてみる。そしてだいたい大火傷をする。そうやって大人も子供も痛みを通して学んでいく。人生とは世知辛いものだ。

幼馴染の突然の報告に驚いたのは半年前。お腹に子供がいる、二人。

予定日までおおよそ1ヶ月、お腹もだいぶ大きくなってきた。そこにいるのがはっきりわかる。出産させられてこの世に生を受けた私。出産を経験したことも、これから経験することもない。男である私はその初めて”に直接触れることは一生ない。一緒に逃げることも、答えを伝えることも、手を引くこともできず、男はただ待ち続けることしかできない。

だから私は祈る。手を伸ばした先に甘いお菓子があることを。

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