淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

かんだやぶそばで本物の蕎麦を食べる

どうしようもなく蕎麦が食べたくなる時ってありません?

 

私は生粋のうどん派なんですが、ときたまどーしても蕎麦を欲してしまう浮気癖があります。特に暑い時期が近づくと誘惑してくるのがざるそば。冷えたつけ汁にワサビを溶かし、そこにちょいと蕎麦をくぐらせてズルルっといきたいものです。

 

天気がはっきりしない日曜日。蒸された部屋でドバドバ汗をかきながら唐突に思ったことは「ああ、蕎麦食べたい」。しかし今日は富士そばでもなければ、ゆで太郎の気分でもない。大江戸そばは食べ飽きたし……

そうだ、たまには趣向を凝らしてちょっと歴史あるお店に行ってみよう。もう23歳の大人だし、チェーン店で満足しているようじゃ舌が肥えないよな。気持ちそのままスマホ片手に「蕎麦 歴史 おいしい」と小学生レベルの検索ワードでググると美味しそうなお店を発見。すぐに出かける準備をして細かく散る雨の中、神田に向かいました。

 

かんだやぶそば

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www.yabusoba.net

 

創業明治13年1880年…がっつり歴史ある店に来ちゃった。

「やぶそば」ってご存じですか?

やぶそばの「やぶ」とは蕎麦御三家に位置する「」のことです。(残り2つは「更科」「砂場」)さらにその「藪蕎麦御三家」の一つに位置するのが今回訪れた「かんだやぶそば」。ね、歴史あるでしょ。

 

神田の街の奥へ奥へと進んでいくと突如に表れた長屋は江戸情緒に溢れ、一見寂れているようにも見えた。だが、近くに寄ってみるとその歴史と趣を直観的に感じる。生け垣の隙間から中を覗き込むと空席が確認できた。食べログ情報では休日は列ができるとあっただけにこれはラッキーだ。全く気にならない程度の小雨でも、雨が降っているという事実は人と外食を遠ざけるのだろう。

暖簾をくぐり、引き戸に手をかける。中に入ると作務衣姿の女性スタッフが一列に並んでお出迎えしてくれた。その後案内されたのは窓際のテーブル席。そこからは灰色に染まった外の景色がよく見える。相変わらず太陽は顔を出しそうにない。 

お品書きを手に取り、ゆっくりとページをめくる。ほぉ、なるほど……

 

 

……高ぇ

 

 

思っていた1.6倍くらい値段が高くてちょっと焦りました。

昼食の蕎麦に1000円かぁ…だって、いつか紹介した豚骨ラーメンなら2杯食べることができるよ。(替え玉まで頼んだら4食分日)日高の油そばに餃子を付けてもおつりがくる…

いや、ここでケチケチしててたら本物の男になれない。今日は値段を気にせず食べたいのを食べたらいいじゃない!と私は店員に向けて力の限り右手を伸ばした。

 

 

 

「たまごとじ」と「天たね」お願いします。

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たまごとじ  1100円

天たね    1400円

水       0円

 

 

なぜ、俺はせいろ(ざるそば)を頼まなかった…

 

割りばしが快音を鳴らして裂ける、これが実食の合図。蕎麦を持ち上げると、湯気が真っすぐ立ち昇る。口をすぼめて白色の靡きを吹き消し、一気にすする。あ、やっぱ熱いわこれ。唇の隙間から息を漏らしながら慎重に口内の熱を逃がす。落ち着いたら、ゆっくり咀嚼し味覚に集中する。するとだんだんと味の輪郭が見えてきた。

 想像より蕎麦が持つ風味は薄い。だし汁の塩気の中から蕎麦の風味を探し出せない。なんだか美味い和風麺料理を食べてる気分だった。正直蕎麦を食べている気がしない。あと、少し伸びてた。

 

もうひとつのお楽しみ、「天たね」は頂上から麓まで衣がサックサク。中を覗くと小エビがこんにちは。口に含めばザクザクサクサクぷりぷりもちもち、歯ざわりのハーモニーをリズミカルに奏でる。それをてっぺんに座って鑑賞している酢橘からは仄かに柑橘系の香りがする。これがまたいいアクセントだ。

 

一通り食べ終わってごちそうさまでした。

 

うーん、、、

 

 

すみません、「せいろ」追加で。


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 せいろ 700円

 

 

これこれ!これが食べたかった!早速、蕎麦の端をつゆにちょこんとつけていただきます。今度こそ満足する蕎麦を食べたい!

 

 

うん

 

 

「うまいっ!」

 

蕎麦を味わうならやっぱりこれだよね。蕎麦そのものが持つ味と香りを同時に味わえるこの贅沢。そして本物の蕎麦はつゆにつけなくても美味しいという。さぁて、お手並み拝見といこうか。ズズッ…ズズズありがとう……あ、うん、うまいわこれ。

主張が強い蕎麦独自の臭さは一切なく、芳醇な香りが仄かに静かに広がる。「味」はその中でゆっくりと顔を出してくる。まさに目を閉じ、噛みしめ、味わうことに特化した蕎麦だ。実際は箸を止めないで一心不乱に喰らってました。

 

 

食事後記

外はまだ雨が微かに振っている。傘をさす必要もないくらいだが、悩んだ末に結局その帆を開いた。曲がり角でふと後ろに振り返ると、歴史を感じさせるその店はこの大都会東京の真ん中で清閑した面持ちのまま佇んでいる。注文の品を待っている間に調べて判明したのだが、かんだやぶそばは2013年に火事で店が半焼した経験をしていた。長く続いた歴史がふとした事故であっけなく終焉を迎えることは珍しいことではない。しかし、かんだやぶそばはその苦難を乗り越え、1年8ヵ月後の2014年10月に営業を再開した。再会までの約2年。その期間はきっと我々には想像もつかない苦労や葛藤があったことだろう。今日私が食したのは老舗蕎麦屋のプライドと不滅のこだわりが詰まった逸品だった。

目の間に並ぶのは蕎麦とつゆとネギ。この「せいろ」は、食にコスパ重視しがちな我々現代日本人に「本物」を伝える。私はきっとまたここに足を運ぶだろう。日常の中に霞んでいく「本物」を思い出すために。

これで蕎麦屋デートプランは完全に確立した。

 

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なお、本日のランチのお会計

 

 

3200円

 

 

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