淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

入社1日で退職代行を使われた中小企業

その時、会社に衝撃が走った。

「さっき電話がかかってきて、新人辞めたらしいですよ」

メールを打つ指が、枚数を数える口が、受話器に伸びた腕が、トイレに立ち上がった足が、従業員がみな、止まった。

「「え」」

今日はゴールデンウィークを控えた4月最終週の月曜日。

 

退職代行から連絡きたみたいですよ」

退職代行。

その言葉を使われる側で聞くとは。

薄汚れた天井を仰ぎながら大きくため息をついた。

 

 

退職代行を使われた側のレポって少ないよね

『退職代行を使ってやめました!明日から無職です!』

と呟けば祝福ムードに包まれる。そんな摩訶不思議な界隈に足を突っ込み早2年が経とうとしている。

私はこれまで沢山の人たちが退職代行(今更だが説明すると退職代行とは退職連絡から手続きまでを被雇用者に代わって済ましてくれるサービス)にお願いして現職にバイバイしていく様子を見てきた。

 

私が思うに退職に至る不満の大半が”期待と現実のギャップ”によるものだと思う。

やりがいのある仕事、尊敬できる上司、成長できる環境、切磋琢磨し合える仲間……その全てを会社が用意してくれて、社会が自分を歓迎してくれる。

そんな期待していた時期が僕にもありました笑笑

 

閑話休題

 

そんな悩める界隈に居たおかげもあって退職代行に馴染みがあったわけなんですが、まさか自分の職場で使われるとは思いもよらず、初動インパクトは想像以上に大きかったです。

そんなわけで私の記憶の鮮度が高いうちに今日という日の出来事を書き記しておこうと思う。

 

0、始業と同時に入電

辞めたのは事務の新人Aさん。

年齢は20代後半で事務部に配属。正社員雇用。

金曜日に初出勤、土日を挟んで月曜日に連絡があったので勤務日数1日での退職となる。

 

連絡は突然、始業と同時に来たらしい。

その5分後に私がいる営業部にも話が上がってきた。

「さっき電話がかかってきて、新人辞めたらしいですよ」

 

1、やっぱり驚く

「「え」」

ぶっちゃけ退職事情にドライな弊社員でも流石に「まじか」と口を開ける。

実際「まじか」とマジで思ってるのは事務の人間だろう。

 

今回の採用に至るまでの事務部の苦労はなかなかだったからだ。

不慣れな転職サイトの運営、のくせに事務職人気からの膨大な応募処理、これまた不慣れな面接を忙しさな合間にこなして、やっと内定を出した1人目には

「貴社の益々のご発展を……」と逆にお祈りされ、

第二候補にも「すみません。他で内定承諾してしまいました」と断られ、

そして三度目の正直、やっと入社を決めてくれた人にはなんと1日で三行半を突きつけられたのだ。そりゃもう可哀想でしかない。

 

2、なぜと憶測が飛び交う

「どうしてなんだろうねぇ」

光の速さで辞めた新人をアジェンダに今日の井戸端会議が始まった。

私は先週の金曜日に有給を使っていたので、一度も顔を合わせることなくお別れの運びになってしまいった。

『20代は僕たちしかいないですけど、がんばりましょう!』

せっかく用意した励ましの挨拶を言うこともできなかったことが悔やまれる。

 

「教え方が厳しかったのかね」

「すぐこの会社に合わないって思ったとか」

「他にも内定があったのかも」

「〇〇さんが変に声をかけたからだ」

考えたところで辞めた理由はさっぱり分からない。なんせ一日しかいなかったから。俺でも弊社のヤバさに気づくのに3日はかかったのに。

てことは8時間で気づいた彼女は優秀だった、、、?

 

上司がここでポロっと

「定時すぎまで業務を教えていたからじゃないの?」

('_')

 

3、わずかな印象が肥大化していく

理由を聞くすべはないし、代行を使われた我々が知ることは永遠ない。今後のために理由くらい知りたいけど。

すると盛り上がりは原因追求から、その人自身の話題に変わる。

「〇〇っぽかった」

「たしかにそんな気がした」

「△△に実家があるって言ってたからお金持ちだ」

「じゃあ辞めても問題ないね」

1日で得た情報をかき集め、理由を当人に落とし込もうとする会話が始まった。

新人が1日でやめた。これは大問題であり大損失だと思う。まだ戦力になっていないからセーフとか他部署だから関係ないとかそんなわけがないだろう。大量採用も定期採用もしていない平均年齢40オーバの中小企業が一人の若手を失った。

完璧なミスマッチなんだろうけど、もう少し重大に捉えてくれてもいいのでは。

 

追記 9/20

と思ってたけど、これは社風故にもう仕方ないし、改善も見込めない。というのが今の私の意見だ。

なぜなら人を育てない会社ではなく、育てられない会社だからだ。

 

4、「退職代行ってなに?」

「なんか退職代行から連絡きたみたいですよ」

「へぇ、そんなのがあるんだ……」

で、この話題おしまい。

いつもの業務へ。

そう、一日でやめた新人を気してる暇など中小企業にはないのだ。

 

 

5、こんなもんよ

この程度である。

正直書くことを無理やり絞り出したくらいで、ほんとあっという間だった。

辞めた人への悪口とか全く聞かなかったし、その後話題になることも一切なかった。ほんと有名人の結婚ニュース程度の話題で終わった。

だから「裏で何か言われてるのでは…」という心配は半分当たっているが、その日限りなので安心して退職代行を使ってほしいと思う。

 

ではでは。楽しい退職ライフを。

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