淡々と、かつ着々と。

やるせない26歳が綴るこれは独り言

「え、読書なら家でよくないw?」

なぜ読書のために喫茶店へ行ってしまうのか。

 

どうも食費が高い。

平日のランチを加味しても高すぎる。そこで家計簿を確認してみると”カフェ”の項目が連続して目立つ。また後ろには”コメダ”の文字。納得した。

 

カフェといえばある日の出来事を思い出す。飲み会という名目で急遽誘われたアレはたしかに合コンだった。当時まだ20歳になったばっかりだった私にとって初めて合コンでの記憶。

疑惑が確信に変わったのはかしこまった自己紹介の流れに入ったときだ。いやおかしかった、だって対面に最初誰も座ってないんだもん。あとからきた女の子たち誰一人として知らないし。よく見たら男性陣の装いになんかいつもと違うし。

空気感の変化に戸惑っている私を差し置いて男性サイドから自己紹介が始まり、みな軽快に口を開く。お前ら準備してきてんじゃねぇよ!自分の番はすぐだった。とりあえず名前、大学名、学部、そして趣味…まぁこれは適当に当たり障りないことを言っておくか。

「えーっと、自分は休日はよく喫茶店で読書してます」

多分これが模範解答だろう。あとは、よろしくお願いしますで締めようとしたその時だった。

「え、読書なら家でよくないw?」

斜め右に座っていた茶髪の子が半笑いで速球を投げこんできた。当時はまだウブな二十歳。初対面の女の子への対応の仕方なんかつゆ知らず。突然飛んできた速球を打ち返すどころか、反応することすらできず、口を出たのは

「あっ、あっ、あへへ、、、」

顔面直撃デッドボールでノックアウトKO。そのあとの記憶はない。

 

あれから5年。今では「耽美な小説を外で読むとなんだか全裸徘徊してる気分になってその背徳感がたまんないね」とかテキトーに”冗談”を言って場外にぶっ飛ばすことができるようになった、ホームランとは言ってないが。

家ではなくあえてカフェで読書する本当の理由。それは単純に”寂しいから”である。

家で本を開いてはて何時間たっただろうも本を閉じて一息ついたら外は真っ暗、は?え、もう9時!? お風呂沸かさなきゃ!これがさみしい。だからといって読書サークルとかなんか友達を誘って読書するのもなんか違う。つまり

「ゆっくり一人で読書したいけど、一人きりで読書したくない!」

ということである。そういうわけで今日も1人きりにならないために喫茶店へ向かった。

注文したホットコーヒーはすぐに出てきた。トレイと一緒に右手で持って空いてる席を探す。間も無く正午を迎える店内はたくさんのお客さんで溢れている。奥に空いてるカウンター席を見つけ、ノースフェイスのダウンを脱いで背もたれに掛け、バックからKindleを取り出し起動する。

右隣の席では同世代の若者が忙しなくMacBookを叩いていた。彼もまた「え、ネットサーフィンなら家でよくない?」に傷付けられた一人かもしれない、たぶんそうだろう。左隣では髪の長い女性が紙を削るようにボールペンを動かしている。彼女もまた「え、勉強なら家でよくない?」に悩まされた一人のはずだ、そうに違いない。勝手に解釈された仲間たちに挟まれながら、私も家でもできる読書を始める。そうこの安心感のためにわたしゃたけぇコーヒーを外で啜ってるんだ。喉から落ちる温かな苦味と一緒にゆっくりと活字の世界に浸っていく。あと途中で彼女と合流した右隣のやつは一生許さない。

とかなんとか言ってても、午後になれば首カクカクしちゃうし、結局夜ご飯まで済ませちゃってそこそこな金額になるしで、あー家でもよかったかもなぁと思ってしまったりでカフェ信者というわけでもない。まぁインドアで留まりたくないインドア派の些細な抵抗というのが実情だろう。

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